建設残土 産業廃棄物について
今日のテーマ:建設残土、排出から処分まで追跡記録…「熱海土石流」受けて導入急ぐ(新聞記事より
こんにちは、行政書士の高橋奈津紀です。
皆さんもご存じの通り、先日の熱海の土石流のニュースは、地元静岡に住む者として非常にショックを受けました。
発生から1か月を経過した今も、行方不明者の捜索は続いています。
改めて、被害に遭われた方に、心よりお見舞い申し上げます。
熱海市の現場では、上流に位置する山中に市への届出を超えた量の残土が盛られ、その盛土が崩落し、被害を拡大させたと見られています。
静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区で発生した土石流災害で、難波喬司副知事は13日に記者会見し、土石流の起点周辺にあった盛り土について「違法な盛り土が災害の原因」との見解を示した。
毎日新聞2021/7/13 ”熱海土石流「違法な盛り土が原因」 静岡副知事が見解示す”https://mainichi.jp/articles/20210713/k00/00m/040/345000c
盛土とは、土を盛って地盤面を高くすることをいい、傾斜のある土地を平らかにするために行われます。
盛土をする場合、建設現場から生じる土(建設残土)を利用することもあります。
この残土の処分に関してですが、現状明確に規制する法律はありません。
土地造成などに再利用できる建設残土は、処分を直接規制する法律がなく、山林などに不適切に処分されるケースがある。静岡県熱海市で起きた土石流災害では、山中に市への届け出を超えた量の残土が盛られ、その盛り土が崩落し、被害を拡大させたとみられている。
(読売新聞オンライン【独自】建設残土、排出から処分まで追跡記録…「熱海土石流」受けて導入急ぐhttps://www.yomiuri.co.jp/national/20210717-OYT1T50330
どういうことかもう少し詳しく説明します。例えば建設現場で発生したがれきや木くず、窓ガラスの破片などは、産業廃棄物といわれ、その廃棄物を排出した事業者は、自らの責任の下、排出された産業廃棄物を処理しなくてはならないと定められています。
事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない
(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第11条)
排出事業者は自社のみで廃棄物の最終処理までできませんので、産業廃棄物を処理できる者(許可業者)へ委託して、産業廃棄物を処理することとなります。
産業廃棄物は、排出事業者の責任の下最終処分追跡できる形で処理されていきます。
一方、土に関しては法律で産業廃棄物とされていないため、このような厳格なプロセスに基づいて処理をする必要がありません。
そのため、今回のように不適切な取扱が出来てしまったのではないかと思います。
このように残土に関しては、処分に関する課題が多くあります。
そんな中、読売新聞オンラインで国土交通省の残土に関する新たな方針についての記事が出ていたのでご紹介します。
建設工事の際に生じる建設残土の不適切処分を防ぐために、国土交通省は、残土の排出元から処分先までの履歴を記録する「トレーサビリティー」制度を導入する方針を固めた。運搬経路を追跡可能にすることで不法投棄などを抑止するのが狙い。国交省発注の公共工事から導入し、民間にも拡大したい考えだ。
読売新聞オンライン【独自】建設残土、排出から処分まで追跡記録…「熱海土石流」受けて導入急ぐhttps://www.yomiuri.co.jp/national/20210717-OYT1T50330
今回の大規模な土砂崩れの発生を受け、現状の残土の取扱にも変化がありそうです。
土は盛土のように再利用でき、土地を豊かにすることもできますが、取り扱いによっては大きな事故を発生させる危険性もあります。
産業廃棄物のように、排出から処分までしっかりと追跡できる制度をつくることは非常に大切であると感じます。
今後運用方法が変わっていく可能性も大いにありますので、注目してみていきたいと思います。