【遺言・相続】自筆証書遺言保管制度について

こんにちは。静岡県富士市の行政書士、髙橋なつきです。

先日、ブログにて遺言書について書かせていただきましたが、

今回はその際にも少し触れた、「自筆証書遺言保管制度」について書いていきたいと思います。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とはなにか、もう一度おさらいする前に、改めて遺言とはなにか?かんがえてみましょう。

遺言とは、その漢字が示すとおり、「自分が亡き後に遺(のこ)す言葉(ことば)」です。

自分が亡くなってしまった後、遺族に思いを伝えたくても、そのタイミングで対話をすることは残念ながらできません。

しかし、遺言を残しておけば、自分亡き後に遺された家族へ思いを伝えることができるのです。

人が亡くなるということは、深い悲しみを伴うものです。

生前多くの思い出を共有してきた家族であればなおさらでしょう。

相続には、こういった家族の故人に対する思いも大きく影響を受けるものです。どんなに仲の良かった家族でも、ちょっとした感情のもつれからトラブルに発展してしまうこともあります。

大切な家族が穏やかに故人を偲べるように、無用なトラブルを防ぐために思いを遺す。遺言の意義はここにあると、私は考えます。

そして、この遺言には、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があることは、前回お話してきたことかと思います。

3種類ある中でも、一般的に利用されることの多いのが「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」です。

公正証書遺言とは、公証役場において2人以上の証人の立会のもと作成され、信頼性の高さが特徴です。自筆証書遺言は、遺言を作成する方が自ら書くことができれば、いつでもどこでも作成ができる手軽さが特徴です。

両者の特徴を並べると、このようになります。

公正証書遺言は手間や費用の面で、作成のハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。しかし、確実な遺言を作成したいと考える場合には適した方法ではないでしょうか。

一方自筆証書遺言は手軽に作成できる一方、自ら作成するため、遺言の要件を満たさず無効となってしまうこともあるため注意が必要です。

また、自筆証書遺言でもっとも懸念されることは、作成した遺言書の保管を本人が行うため紛失や隠匿のリスクがあること、そして本人が亡くなった後に未開封の遺言書を家庭裁判所へ提出して、検認手続きをする必要があることでしょう。

検認とは、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などの検認の日現在における遺言書の現状を確認し、証拠を保全する(遺言書の偽造・変造を防止する)手続きである。

税務経理協会出版 「新訂第2版 行政書士のための遺言・相続 実務家養成講座」p65(竹内豊 著)より

検認とは、遺言書の状態を確認し、証拠を保全するために必要な手続きです。

家庭裁判所へ検認の申立てをしてから、手続きが完了するまでには1か月程度時間がかかります。申立てをするためには戸籍謄本などを添付する必要がありますので、それらの収集の時間を合わせると、1.5か月から2か月程度時間がかかります。

自筆証書遺言では、「遺言書の紛失等のリスク」と「相続発生後の検認手続き」が、デメリットとして考えられていたわけですが、

このデメリットを解消するために期待できるのが、「自筆証書遺言書保管制度」なのです。

保管制度を利用することで遺言書を確実に保管できる。検認も不要に

遺言は、相続をめぐる紛争を防止するために有用な手段であり、自筆証書遺言は自書さえできれば作成できる、非常に手軽な手段です。

しかし、遺言者本人の死亡後、相続人等に発見されなかったり、一部の相続人等により改ざんされる等の恐れがあることは、お伝えした通りです。

自筆証書遺言の「手軽で自由度の高い」というメリットは損なわす、「発見されない」「改ざんの恐れがある」といった問題点を解消するための方策が「自筆証書遺言保管制度」なのです。

自筆証書保管制度では、作成した遺言書は、法務局(遺言書保管所)に預けられます。

遺言書は預けられる際に遺言書保管官(法務局の職員)により外形的な不備がないか確認されます。(全文、日付及び氏名の自書、押印の有無等)

預けられた遺言書はデータ化され、原本とともに長期間適正に管理されることとなります。

相続開始後には、相続人等は請求によって遺言書の閲覧や遺言書の内容の証明書を取得することができます。また、請求をした相続人以外の相続人に対し、遺言書が保管されている旨の通知がされます。

また、この制度を利用して保管されている遺言書は、家庭裁判所の検認が不要であるため、相続人へ時間的な負担をかけることなく、自筆証書遺言を残すことができるようになります。

自筆証書遺言保管制度を利用するには?~利用のながれ~

自筆証書遺言書保管制度を利用し、遺言書を保管する場合のながれは以下の通りです。

①自筆証書遺言に係る遺言書を作成する

自筆証書遺言保管制度にて定められた形式で遺言書を作成します。

形式の決まり事はいくつかありますので、詳しくは法務省民事局の作成したパンフレットをご参照ください。

法務省民事局「自筆証書遺言保管制度のご案内」パンフレット

②保管の申請をする遺言書保管所を決める

保管申請については、

遺言者(遺言作成者)の住所地

遺言者の本籍地

遺言者が所有する不動産の所在地

のいずれかを管轄する遺言保管所(地方法務局)に対し申請をする必要があります。

ただし、すでに他の遺言書を遺言書保管所へ預けている場合には、その遺言書保管所へ申請します。

③申請書を作成する

申請書に必要事項を記入します。

申請書の様式は法務省HPでダウンロード、または法務局窓口に備え付けられています。

001321933.pdf (moj.go.jp)より参照

④ 保管の申請の予約をする

 1.予約サービス専用HPから予約する(24時間365日可)

 2.法務局(遺言書保管所)へ電話で予約する(受付時間平日午前8:30~17:15まで)

 3.法務局(遺言書保管所)、窓口で予約する(受付時間平日午前8:30~17:15まで)

2,3の方法は手続きを行う法務局へご連絡ください。

⑤保管の申請をする

以下のものを持参し、予約日当日に遺言者本人が遺言書保管所へ出向きます。

□ 遺言書(ホチキス止めなし、封筒不要)

□ 申請書(あらかじめ記入しておく)

□ 添付書類(本籍の記載のある住民票の写し等)※遺言書が外国語により記載されているときは、日本語による翻訳文

□ 本人確認書類(マイナンバーカード/運転免許証/運転経歴証明書/パスポート/乗員手帳/在留カード/特別永住者証明書のうち有効期限内のものを1点)

□ 手数料:1通につき3,900円

⑥保管証を受け取る

手続終了後、遺言者の使命、出生の年月日、遺言書保管所の名称および保管番号が記載された保管証が発行されます。

この保管証は、遺言書の閲覧、保管の申請の撤回、変更の届出をする時に使いますので大切に保管するようにしましょう。

証明書に記載された保管番号は、相続人等が遺言書情報証明書の交付の請求等をする際に番号が分かると便利です。

まとめ

本日は、自筆証書遺言保管制度についてブログに書きました。

自筆証書遺言保管制度は、大切な遺言書を紛失等のリスクから守り、遺言を確実に残すために有効な制度です。

自筆証書遺言保管制度を利用している場合は、ご家族に制度を利用して遺言書を保管していることを伝えておき、いざという時は遺言書保管所へ遺言書情報証明書を交付してもらうよう伝えておくとよいでしょう。

少しの準備で、遺された方の手間が変わります。また、遺言を確実に残すことができれば、自分亡き後のことも少し安心できるのではないでしょうか?

ぜひ、自筆証書遺言保管制度のご利用もご検討くださいませ。

自筆証書遺言保管制度では、保管所にて形式的な体裁についての確認はいたしますが、内容についての審査はされません

どのような内容を書けばいいか、ご不安な場合はお気軽にご相談くださいませ。

お話じっくり聞かせていただき、想いが残せるようアドバイスいたします^^

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

静岡県富士市の行政書士、髙橋なつきでした^^

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