【建設業許可】専任技術者要件⑨ 鋼構造物工事の場合
こんにちは。静岡県富士市の行政書士、髙橋なつきです。
建設業許可要件の中でも営業所の専任技術者に関する要件ついて、建設業許可29業種それぞれについて説明をしていくこのシリーズ、第9回目の今回は鋼構造物工事について、専任技術者となれる国家資格及び実務経験要件について、説明していきたいとおもいます。
なお、今回説明する内容は一般建設業許可に関するものとなります。特定建設業許可とは要件が異なりますのでご注意ください。
鋼構造物工事とは
鋼構造物工事とは、
形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事
をいい、具体的には
鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油、ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事などが該当します。(建設業許可事務ガイドライン別表1:平成13年国土交通省建設業課長通知第97号より)
他業種との区分けについて(「建設業許可事務ガイドライン(平成13年国土交通省建設業課長通知第97号)」より)
「とび・土工・コンクリート工事」における「鉄骨組立工事」と、「鋼構造物工事」における「鉄骨工事」との区分の考え方は、
鉄骨の制作、加工から組立てまでを一貫して請け負うのが「鋼構造物工事」における「鉄骨工事」であり、すでに加工された鉄骨を現場で組み立てることのみを請け負うのが「とび・土工・コンクリート工事」における「鉄骨組立工事」となります。
また、「とび・土工・コンクリート工事」における「屋外広告物設置工事」と「鋼構造物工事」における「屋外広告工事」との区分の考え方は、
現場で屋外広告物の制作、加工から設置までを一貫して請け負うのが「鋼構造物工事」における「屋外広告工事」であり、それ以外の工事が「とび・土工・コンクリート工事」における「屋外広告物設置工事」となります。
ビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事は「消防施設工事」ではなく、建築物の躯体の一部の工事として「建築一式工事」または「鋼構造物工事」に該当します。
専任技術者とは
専任技術者とは、建設業許可要件で
営業所ごと・許可業種ごと配置することが義務づけられています。
建設工事に関する業務を行うにあたり専門の知識を有すると認められる者の中で、営業所に専任で常勤している者が該当します。
専門の知識を有すると認められる者とは、建設業に関する国家資格や実務経験を有する技術者のことをいい、具体的には、
➀ 一定の国家資格
➁ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して一定の実務経験を有する者
➂ その他※海外での工事の実務経験を有する者で、当該経験の内容につき国土交通大臣の個別審査を受け、一般建設業の営業所の専任技術者となり得る者として、その認定を受けたもの
が、該当します。
➂のその他に該当するケースは非常に稀で、➀一定の国家資格又は➁一定の実務経験をもって専任技術者の要件を満たすことがほとんどかと思います。
鋼構造物工事における専任技術者 資格要件
➀ 一定の国家資格を保有していること
鋼構造物工事において、専任技術者として認められる国家資格は下記の通りです。
下記の資格を一つでも保有していれば、専任技術者としての要件を満たすことができます。
- 一級土木施工管理技士
- 二級土木施工管理技士(土木)
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(躯体)
- 一級建築士
- 建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術管理
- 鉄工・鉄罐(1・2級)※2級は3年の実務経験必要
- 登録橋梁基幹技能者
一定の国家資格は他の建設業種でも専任技術者要件として認められるものもあります。
取得したい建設業種が複数ある場合は、戦略的に資格取得の計画を立てていくことをお勧めします。
➁ 一定の実務経験を有すること
鋼構造物工事における専任技術者要件を実務経験で満たす場合、鋼構造物工事に関し10年の実務経験を有する必要があります。
ただし、国土交通省令で定める学科を卒業した者については、実務経験要件に必要な期間が緩和されます。
鋼構造物工事では、土木工学、建築学又は機械工学に関する学科を卒業している場合、卒業学校に応じて実務経験が3年または5年に緩和されます。
まとめ
今回は鋼構造物工事における専任技術者要件について説明しました。
専任技術者は、建設業許可を取得するためには営業所ごとに必ず必要な者になります。
専任技術者が辞めてしまい、他に該当する技術者がいない場合、建設業許可要件を満たすことができなくなり、許可そのものの存続が困難になってしまいます。
専任技術者が辞めた場合は、14日以内に届出が必要ですが、届出をせず、専任技術者不在のまま操業し続けてしまうと、許可の取消など重い処分がなされ、事業に大きなダメージを与えることとなります。
そうならないためにも、専任技術者要件を満たす人材の確保や社内での資格取得など、スキルアップの奨励、そして従業員が引き続き働き続けたいと思うような職場環境づくりが大切になってきます。
建設キャリアアップシステムによる評価やキャリアの見える化も、職場環境を向上させるには有効でしょう。
では、ここまでお読みいただきありがとうございました。
富士市の行政書士、髙橋なつきでした。
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