放課後等デイサービスを始めたいと思ったときに意識したい3つのこと

皆さんこんにちは。静岡県富士市の行政書士、髙橋なつきです。

すこしづつ春の訪れを感じるようになってきましたね。

先日訪れた、朝霧高原にあるまかいの牧場では、たくさん植えられた梅の花が、あちらこちらで開花しており、一足お先に春を感じることができました。

息子たちが通っている保育園でも、すこしづつ進級に向けて準備が始まっています。

春の一歩手前、この季節はいつも新しい季節へのワクワクと、過ぎた日々への少しの寂しさが相まって、なんとも言えない気持ちになります。

まだまだマスクが手放せないご時世ですが、新しい季節はより一層楽しく元気に過ごせるといいですね。

さて、本日は、障害福祉サービスの中でも「放課後等デイサービス」について、「放課後等デイサービスを始めたい!」と思ったときに意識すべき点について、お話させて頂こうと思います。

その他の障害福祉サービスを始めたいという方にも、障害福祉サービスを始めるためのポイントと重なる部分がございますので、参考にして頂けたらと思います。

では、早速始めていきましょう♪

【放課後等デイサービスについて】

まず、放課後等デイサービスとはどのようなサービスか、皆さんご存知でしょうか?

お住まいの地域でも、「放課後デイサービス○○」といった看板や広告を一度は見たことがあるのではないでしょうか。

私の住む地域でも、放課後等デイサービスの看板をよく見かけるようになりました。

とはいえ、私自身が幼少の頃には聞いたことのないサービスで、初めて目にしたときは、「デイサービス?介護サービスの一つかな?放課後?どんなことをする場所なんだろう」と疑問に思ったものです。

「放課後等デイサービス」という言葉に聞き馴染みのない方も多いと思います。

それもそのはず、放課後等デイサービスとは、児童福祉法に定められたサービスの一つで、平成24年に誕生した比較的新しいサービスなのです。

それ以前は「児童デイサービス」「知的障害児通園施設」「難聴児通園施設」「肢体不自由児通園施設」等、障害の種別で分かれていた障害児施設でしたが、障害を持つ子供が身近な地域でサービスを受けられる支援体制が必要との課題から、一元化され新たに創設されたサービスです。

放課後等デイサービスとは、おもに学齢期の児童(6歳~18歳頃まで。必要性がある場合は20歳まで利用できるとされています)に対し、授業終了後や長期休暇期間等に必要なサポートを行うサービスです。

平成24年に発表された厚労省による「児童福祉法の一部改正の概要について」(平成24年1月13日 社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課)の中には、放課後等デイサービスの事業の概要について以下のように定められています。

学校通学中の障害児に対して、放課後や夏休み等の長期休暇中において、生活能力の向上のための訓練等を継続的に提供することにより、学校教育と相まって障害児7の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを推進。

厚生労働省「児童福祉法の一部改正の概要について」(平成24年1月13日 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課) 

また、提供するサービスについては「学校授業終了後又は休業日において、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与」と定め、具体例については以下のように記載しています。

・多様なメニューを設け、本人の希望を踏まえたサービスを提供。

➀自立した日常生活を営むために必要な訓練

➁創作的活動、作業活動

➂地域交流の機会の提供

➃余暇の提供

・学校と連携・協働による支援(本人が混乱しないよう学校と放課後等デイサービスのサービスの一貫性が必要)

厚生労働省「児童福祉法の一部改正の概要について」(平成24年1月13日 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課)

多様なサービスが想定されており、本人の希望を踏まえたサービスを提供できるのも、放課後等デイサービスの特徴です。

放課後等デイサービスでは、身体的な機能向上を目指すための理学療法士等によるリハビリテーションから、日常の学習等の支援、地域交流や創作活動など、利用する児童の課題や希望に合わせた支援が行われています。また、児童に対するサポートはもちろん、そのご家族に対する相談支援等も併せて行われています。

また、提供するサービス(支援)の内容については、児童発達支援管理責任者(後述します)、が児童及びそのご家族と面談の上、必要な支援計画を立て、その計画に則ったものとなります。

【利用できる児童について】

対象児童は、障害者手帳の有無は問いません。

児童相談所、市町村保健センター、医師等により療育の必要性が認められた児童も対象となります。

なお、放課後等デイサービスを利用するためには受給者証の発行をする必要があります。発行はお住まいの市町村で対応頂くことができます。

(基準省令第65条)

放課後等デイサービスに係る指定通所支援(以下「指定放課後等デイサービス」という。)の事業は、障害児が生活能力の向上の為に必要な訓練を行い、及び社会との交流を図ることができるよう、当該障害児の身体及び精神の状況並びにその置かれている環境に応じて適切かつ効果的な指導及び訓練を行うものでなければならない。

行政書士となり、初めて事業者様にご依頼いただき放課後等デイサービスの開設のお手伝いしたときは、学校等の集団の中ではケアしきれない部分をサポートし、利用児童一人ひとりと真摯に向き合おうとする事業者様の姿が印象的でした。そのサポートが実を結び、利用児童の出来ることが増えていったり、学校生活の中で抱えている困難が少しずつ和らいでいく様子を見ていると、このサービスの意義を非常に強く感じました。

では、放課後等デイサービスを始めたいと思った場合、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。

整理していきましょう。

【放課後等デイサービスを始めるためには、指定申請をすることが必要】

放課後等デイサービスをはじめ、障害福祉サービスといわれるものを始める場合、事業所のある都道府県等から指定を受けなくてはなりません。

この指定権者は、静岡県の場合

静岡市・浜松市(政令市):各市町村

それ以外の市町村:静岡県

が指定権者となります。事業者は必要書類を揃え、指定権者へ申請を行わなくてはなりません。

申請が受理されると、各指定権者によって審査がなされます。

ちなみに、放課後等デイサービスをはじめ障害福祉サービスには、指定を受けるために最低限度の基準というものが定められています。

具体的には「人員に関する基準」「設備に関する基準」「運営に関する基準」があり、それぞれ具体的に満たすべき基準が定められています。

基準を満たさない場合は、指定を受けることができず、事業を行うことができなくなりますので、まずは指定を受けることが初めの一歩となります。

【基準違反に対する指導監督及び指定の取り消し(解釈通知第一の2)】

●指定障害児通所支援事業者等が満たすべき基準を満たさない場合には、指定障害児通所支援事業者等の指定又は更新は受けられない。

事業者様においては、指定基準を意識して準備を進めていくことが非常に大切になります。

基準を満たさなければ、せっかく準備を進めて頂いても、事業を行うことができず、時間もお金も無駄にしてしまった。。なんてことになりかねません。

ちなみに、この基準は事業を行うにあたり必要な最低限度の基準を定めたものです。

そのため、「基準を満たしていればそれでいいのだ!」ではなく、利用者に質の高いサービスを提供できるよう、事業者は常にその運営の向上に努めなくてはならないとされています。(解釈通知第一の1参照)

では、次に実際に事業所を開設するために求められる基準について、説明したいと思います。

【求められる基準は人・設備・運営】

放課後等デイサービスを開設するにあたっては、大きく「人員に関する基準」と「設備に関する基準」「運営に関する基準」の3つの基準が定められています。

これらに細かく定められた基準をクリアすることで、放課後等デイサービスとして、支援を提供することができるようになります。

理念や理想が素晴らしくても、この基準に該当しなければ事業所を開設することはできません。一つ一つ確認し、確実に満たすようにしましょう。

本日は、上記3点の基準の中でも、開設を考えたときにまず検討すべき「人員に関する基準」と「設備に関する基準」について、お話したいとおもいます。

「人員に関する基準」とは?

放課後等デイサービスを運営する際に配置すべき人員について定められています。

まず、施設に1人以上(そのうち1人以上は専任かつ常勤)の児童発達支援管理責任者(児発管と略されます)を置く必要があります。

児発管は、

➀利用児童の適切な支援内容を検討、及び「放課後等デイサービス計画」の作成

➁利用児童及びその家族に対する相談及び援助の実施

➂他の従業員に対する技術指導及び助言の実施

の3点が責務として定められています。放課後等デイサービスを利用するにあたり、利用児童にとって適切な支援を受けられることは非常に重要なポイントです。その支援を計画する方ですので、サービスの質に直接関わる非常に重要な人員となります。そのため、誰でも自発管になれるわけではなく、条件を満たす方が講習会を受講することで、自発管となることができるという厳しい要件があります。

また、利用児童やその家族の抱える課題を正確に把握することはもちろん、何でも話せる信頼関係を構築できる方が適任であるでしょう。

自発管の要件については、別の機会に改めてブログに書きたいと思います。

事業所を開設するにあたり非常に重要なポジションですので、事業所の開設を検討する際は、自発管の確保はまず第一に行っていただきたいと思います。

自発管の確保ができそうだ。ひとまず安心。と思った方、人員配置にはまだ注意しなければならないポイントがあります!

それが、実際に支援を行う従業者とその人数についての基準です。

【支援を行う職員とその人数についておさえましょう】

放課後等デイサービスでは、利用定員に応じて配置すべき職員の人数が定められています。

➀一日に利用する児童の数が10名以下の場合・・・2人以上

➁一日に利用する児童の数が10名を超える場合・・・2人に児童の数が5又はその端数を増すごとに1を加えて得た数以上

➀の基準はイメージしやすいかと思います。「利用者の総数が10名以下であれば2人以上の配置が必要である」と分かりやすいですよね。

➁の基準は少しややこしく感じますが、こちらは利用者11名~15名までは2人+1人以上の配置(3名以上)、16名~20名まではさらに+1名以上(4名以上)と、利用児童が増えるにあたり人員も増やす必要があります、ということです。

利用児童が増えれば、一人の児童を十分に支援するためには人員を増やす必要がありますよね。そのため、従業者の人員も増やすことを義務付けているのです。

ここまでは、支援を行う従業員の人数のお話です。

職員の配置のみ意識して、「ウチは利用定員が10名だから、2名の職員を配置すれば大丈夫だよね」等と安易に考えていると危険です!

支援を行う職員は、誰でもなれるわけではありません。しっかりと要件が定められていますので、こちらもおさえていきましょう。

【職員もスペシャリストであることが必要】

放課後等デイサービスの「人員に関する基準」で定められている従業者とは、実際に利用児童に対して支援を行う方を言います。自発管の作成した支援計画を基に、実際に利用児童と関わっていく方ですので、「資格不問!」とはいかず、その資質もサービスの質に大きくかかわってきます。

従業者の資格として認められているのは以下です。

・児童指導員

・保育士

・障害福祉サービス経験者(※)(!)令和3年度より廃止

※障害福祉サービス経験者:中学卒業以上で、障害者総合支援法第五条第1項に規定するサービス(「居宅介護」「重度訪問介護」「同行援護」「行動援護」「療養介護」「生活介護」「短期入所」「重度障害者等包括支援」「施設入所支援」「自立訓練」「就労移行支援」「就労継続支援」「就労定着支援」「自立生活支援」及び「共同生活援助」)に2年以上従事した者

(!)「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」にて、基準の見直しが行われ、「障害福祉サービス経験者」は配置基準における「従業者」としてカウントできなくなります。

※現時点で旧基準に基づく指定を受けている事業所については2年間の経過措置あり

令和3年度の改訂に伴い、配置基準における「従業者」として認められるためには、「保育士」または「児童指導員」であることが求められることとなりました。

改訂の目的としては、「専門性及び質の向上に向けて」とのことで、よりサービスの質を目指した改訂と理由づけられています。

今後開設する事業所においては、利用定員に応じて配置すべき職員の人数を基に、保育士又は児童指導員を配置する必要があります。

基準に当てはまる人員を集めなくてはなりませんので、こちらも開所を意識した段階で、段取りが必要でしょう。

人員に関する基準に関しては、資格等による要件が厳しくあります。ここの確保は事業所運営の肝となりますので、求める人材を確実に確保していくことが重要となります。

【設備に関する基準について】

さて、次は設備に関する基準についてお話させて頂きます。

放課後等デイサービスで支援を提供するにあたり、定められている設備に関する基準は以下となります。

(基準省令第68条)

第68条 指定放課後等デイサービス事業所は、指導訓練室のほか、指定放課後等デイサービスの提供に必要な設備及び備品等を備えなければならない。

2 前項に規定する指導訓練室は、訓練に必要な機械器具等を備えなければならない。

3 第1項に規定する設備及び備品等は、専ら当該指定放課後等デイサービスの事業の用に供するものでなければならない。ただし、障害児の支援に支障が無い場合は、この限りでない。

必要な設備を備えておく必要があることが定められていますが、具体的にどのような設備を設置する必要があるか等の記載はありません。これは、事業所によって運営に特色があるため、一概にどの設備がどの程度必要かまでは詳細に決めていないものと考えられます。

しかしながら、支援を行うために十分なスペースや設備は必要となることから、事業者自身が「どのような利用者に向けて、どのような支援を提供していきたいのか」明確にしたうえで、設備の準備をすることが必要です。例えば、理学療法士による機能訓練を行いたいと考えているにも関わらず、訓練を行うに十分なスペースが確保できなければ、支援の提供そのものが難しくなってしまいます。逆に、学習面や日常のコミュニケーションなどの向上を目指した支援を行う場合は、広すぎる空間よりも、会話ができる距離感を保てるような個人スペースがあった方が利用者さんの安心につながるかもしれません。

事業所のカラーに合った間取り、利用者が通いやすい場所等、ポイントを押さえて選ぶことが大切です。

また、事業所として使用する建物に関し、消防署へ「防火対象物使用開始届出書」を提出する必要もありますので、こちらも忘れずに行うようにしましょう。

【まとめ】

本日は、放課後等デイサービスを開設したいと思ったときに注意すべきポイントとして、満たさなくてはならない基準が存在することを説明しました。そして、その中でもまずは検討すべき「人員に関する基準」と「設備に関する基準」についてお話させていただきました。

放課後等デイサービス含め、障害福祉事業所は開設する都道府県や市町村によって独自ルールがあったり、運用に差がある場合がございます。

開設を決めた場合、まずは管轄の都道府県または市町村へ相談に行くことが必要です。その際には、今回のポイントを押さえていただき、満たすべき要件が少しでも整理できましたら幸いです。

当事務所では、放課後等デイサービス等、障害福祉サービスの指定申請のサポートはもちろん、開所後の国保連請求も事業者様に代わってお手続きさせていただくことができます。

事業所の開設でお悩みでしたら、ぜひ一度髙橋なつき行政書士事務所までご相談ください。

そろそろ花粉も飛散しているような、むずむずとの闘いの日々が始まった気がしますが、暖かくなるのはありがたいですね。

今日も、皆様にとってよい一日となりますよう祈っております!

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