【ニュース】技能実習制度見直しの方向で検討へ

こんにちは。静岡県富士市の行政書士、高橋なつきです。

今週は外国人技能実習制度について、有識者会議において、制度廃止の方向で検討が進められていることが報じられました

政府の有識者会議で、制度の見直しの議論が進められてきましたが、10日の会議では中間報告書のたたき台が示され、「技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべき」としています。 また、技能実習生が原則、職場を変更できない点についても、従来より緩和する方向となっていて、有識者会議で引き続き、制度のあり方について議論が進められることになります。

「外国人技能実習制度」 廃止を検討へ 制度の目的と実態のかい離指摘(日テレNEWS) – Yahoo!ニュース

技能実習制度といえば、外国人技能実習生の失踪事件などが取り沙汰され、一部では「外国人奴隷制度」などと揶揄されることもあり、あまりいいイメージを持たない方も多いかもしれません。

しかしながら、外国人に対する技能実習制度(以下、「技能実習制度」といいます。)は本来、日本で開発され培われた技能、技術や知識を、開発途上国などへ移転することによって、その国の経済発展を担う人を育てる、「人づくり」を目的として創設された、日本における国際協力のための制度です。

日本の技術力を学び、習得することで母国で活躍し、ひいては国の経済発展に寄与する、というのが、本来の目的であったのです。

上記の通り「人づくり」を通じた国際貢献が目的の制度ですので、技能実習法(正式名称:外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)には、技能実習を労働力の確保として利用してはならない旨が明記されています

第三条 技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。

 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 | e-Gov法令検索

しかしながら、実態としては労働力不足を補うために利用されていることは、かねてから指摘されていました。

今回、有識者会議の報告書によると、実際に本国へ技能移転がされたケースは全体の2割程度であり、国際貢献だけを技能実習制度の目的に位置付けるとするには無理があると指摘されています。

また、制度創設当初とは社会情勢も大きく変化しており、近隣国の賃金も向上していることから、外国人にとっても、かつての「日本で働けば、たくさん稼ぐことができる」というメリットは薄くなっています。

近隣国も同様に人材不足を抱える中、優秀な働き手を引き入れるためには、外国人から日本が選ばれるよう努力することも必要です。

そのため、長期的に日本で活躍できる人材を育成するためのキャリアパスの構築するなど、制度を考えなおす必要があります。

技能実習制度は、制度の負の側面ばかりが大きく報じられてしまい、悪いイメージが強い制度ですが、技能実習制度を利用している事業者や技能実習生の多くは、法令遵守の上、適正に制度を活用しています。

技能移転という目的のため、外国人人材育成としての機能は30年近くの時間をかけて構築されている制度であると感じます。

しかしながら、制度の本来の目的と、実態が乖離していることは事実です。

人手不足を解消する手段として、2019年からは、特定技能という新たな在留資格での滞在が可能となりました。・

介護分野や飲食業など、慢性的な人手不足に悩む業種にとって、特定技能制度は人手不足解消の大きな手段となっています。

今後、技能実習制度が培ってきたノウハウを基に、特定技能制度との一本化も含め、実態に即した在留資格となっていくのか、注視していきたいところです。

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第5回)資料2-2「中間報告(たたき台)概要」より

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

静岡県富士市の行政書士、高橋なつきでした。

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第5回) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

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