しっておきたい建設キャリアアップシステム
おはようございます。静岡県富士市の行政書士、髙橋なつきです。
今朝は富士山にうっすらと雪がみえました。まだまだ日中は汗ばむ陽気も多いですが、
季節は確実にうつろっているのだなぁと感じた今日でした。
さて、昨日ですが市内の信用金庫さんの社内研修の一環で、
建設キャリアアップシステムについてお話させていただきました。
建設キャリアアップシステム(通称CCUS)は、2019年に本格運用が始まり、今年で3年がたちます。
本日はあらためて、建設キャリアアップシステムについて
・建設キャリアアップシステムって何?
・導入するメリットって??
という点について、順にお話していきたいと思います。
CCUSは働き方を改革する切り札だ
まず、なぜCCUSが始まったのでしょうか?
CCUSは、建設業の働き方改革の一環として運用が始まりました。
あらゆる業界で、働き方改革は叫ばれていますが、とりわけ建設業界は担い手不足が非常に深刻です。
その理由に高齢化・若手の担い手不足があります。現在建設業に従事する技術者の25%、4人に一人は60歳以上です。一方で29歳以下の技術者は全体の10%程度にとどまっています。

現在60歳の技術者さん、10年後には70歳になっています。生涯現役をつらぬくこともできますが、そうであっても、
今後10~15年で、ここの世代がごっそり抜けてしまう可能性は非常に高いといえます。
一方29歳以下の若手の就業者数は全体の10パーセント程度であり、
この層が技術的にもマネジメント的にも中間層へ移動する10年後を考えると、
現場マネジメント能力、施工能力ともに現状維持していくことが厳しくなることが予想されます。
深刻な人手不足を解消するためには、建設業界の「長時間労働の常態化」「キャリアの描けない業界構造」「離職率の高さ」など、
の課題を改善し、
担い手が建設技能者として生涯を託しうる産業となるよう、業界全体として取り組んでいくことが急務です。
具体的には、長時間労働の是正、技能と経験にふさわしい処遇を実現する給与・社会保険改革、労働力が減少する中で、ICTを活用した生産性向上への取り組み、これらを行う中で、その方策の一環が建設キャリアアップシステムということになります。

CCUSのしくみ
建設キャリアアップシステムとは、
建設技能者の経験・知識・資格など、技能者の能力を推し量るのに必要な情報をカードで蓄積し、
例えば転職したとしても業界横断的に蓄積されていく仕組みとなります。
国交省では、令和5年からあらゆる工事でのCCUS完全実施を目標としております。
令和4年7月現在、事業者では184,137事業者、技能者では実に951,256名がすでに登録をしております。技能者数でいうと全体のおよそ3分の1が登録を完了しております。

技能者は1人1人にマイナンバーカードのような顔写真付きICカードが発行されるのですが、カードもレベル1~4まで区分けされており、レベルごとに必要な経験・能力が明確になっています。
レベルごとに目安となる賃金も示されるので、どのような経験を積めば、どれくらいの年収が見込めるのか見通しを立てることも可能です。
建設キャリアアップシステムは技術者にとっては自身のキャリアを客観的に証明でき、処遇改善につながることが期待できます。
CCUSは技術者・事業者双方にメリットのある制度です
建設キャリアアップシステムは、導入することで技能者・元請・下請事業者すべてにメリットがある制度です。
特に技術者にとっては、本来の目的が技術者の労働環境を改善することにありますので、メリットは非常に大きいのではないかと思います。

技能者メリット① レベルごとの年収目安をつくり専門工事業団体で賃金相場の形成に取り組んでいる
CCUSでは、専門分野ごとに専門工事業団体が、レベル1~レベル4の能力評価基準を定めています。
これにより、「どのようなスキルや経験を身に着ければ、評価レベルが上がるのか」が客観的に分かる仕組みになっています。
加えて、レベルごとの賃金目安も示されますので、自身の能力が適正に評価され、それが賃金に反映される環境の醸成が期待できます。
技能者メリット② 会社や現場が変わっても就業履歴が蓄積できる
現場や勤務先が変わっても就業履歴が蓄積され、自身の能力の証明が容易になることで、切れ目のないキャリア形成が可能となります。これは流動性の高い建設業界では非常に大きいと思います。
また、経験が蓄積できるということは、建設業許可取得の際に必要な実務経験の証明も便利になる可能性があります。
経営業務の管理責任者や専任技術者になる際には、これまでの実務経験の証明が必要になるのですが、
CCUSによってその証明も容易になれば、許可取得もぐっと身近になるのではないかと思います。
技能者メリット③ CCUSに蓄積された就業履歴データを建退共掛金の電子資料として活用
建設業独自の退職金制度である建退共ですが、、現在紙ベースの証紙を冊子に貼り付けて管理するというアナログな方法で管理しています。
これでは紛失のリスクなど、管理が大変ですが、カードリーダーでタッチすることで自動で積み立てられる形になっていきますので、管理しやすくなるメリットがあります。
専門工事業者のメリット① 雇用技能者数、保有資格、社会保険加入状況等の根拠として取引先に情報を示せる
元請企業から社保の加入状況などの情報提示を求められた場合、システムに登録された情報を参照してもらうことができますので、情報提示が容易になります。
専門工事業者のメリット② 技能者能力評価と連動した施工能力等の見える化を令和3年度から順次開始
自社に在籍する技術者のレベルや、施工実績が客観的に証明されることで、実力が見える化され、積極的な発注を促すことができる可能性があります。
専門工業者のメリット③ 出面管理のデータ化、賃金や代金支払いの根拠を明確にする資料として活用
現場管理の効率化が見込めます。
元請・下位下請会社のメリット① 新規取引業者の施工能力や技能者数、資格等が確認できる
元請事業者等が事業者が新たな下請事業者に工事を依頼する際、その業者の施工能力や所属する技能者の数、技能レベルなどが確認できるため、施工の安心感につながります。ここで社会保険加入状況や安全衛生資格保有の有無、一人親方の労災特別加入状況も確認できるのもポイントです。
元請・下位下請会社のメリット②
施工管理台帳、作業員名簿の作成、建退共の証紙受・貼付作業の簡素化、ペーパーレス化も可能
いままで書面管理していた台帳や名簿関係、建退共の受け渡しがペーパレス化することで、作業の簡素化が望めます。
これは事務の効率化、ミスの防止の観点からも大きいと言えます。
元請・下位下請会社のメリット③ 増えている外国人労働者の資格等の確認ができる
一方デメリットとしては、最初の手続きが面倒(必要書類をJPEGデータ化したり、細かな入力が必要ですので、結構大変です)なこと、システム利用開始時に費用が発生することやシステム管理料が発生するなどのコストがかかることが挙げられます。
CCUSを登録するには
CCUSの登録を行う方法は、「インターネットによる申請」と「登録認定機関へ書類を持参して行う申請」の2つがあります。

当事務所では、CCUS登録行政書士が常駐しておりますので、お忙しい事業者様に代わり、CCUS申請手続きの代行を行うことができます。

・手続きをしたいけど、どこから始めたらよいかわからない
・忙しくて手続きに時間を割けない
など、手続きでお困りの際はお気軽にご相談ください。
建設キャリアアップシステムの登録は義務ではありません。
しかしながら、管轄する国土交通省は「令和5年度から建退共のCCUS完全移行及びそれと連動したあらゆる工事におけるCCUS完全実施」を目標として掲げており、実質加入が前提のながれは今後加速していくと予想されます。
ブログでもお伝えした通り、加入には手間と費用がかかりますが、そのコストを上回るメリットがあります。
手続きにはお時間がかかりますので、皆様ぜひ余裕を持って手続きをしてくださいね。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
静岡県富士市の行政書士、髙橋なつきでした。